シェアウェアと試用制限 (1)ユーザ登録の方法
対象 | これからシェアウェアを作ろうとしている人 |
公開/改記日 | 2000 01/01 |
初めに書いておきますが、この文章をシェアウェアの不正利用のあしがかりとするということのないよう、お願いします。(今回の話題では少なくとも関係ありませんが、今後の話題が関連してくる可能性があります。)この文章はシェアウェアの発展を願って作成された文章であり、不正利用はシェアウェアの発展を著しく害しているものだということを認識してください。
もともとシェアウェアというものは継続して利用するためにはパスワードなどを入れるような必要のあるものではなかったそうです。が、少なくともWindowsソフトの世界ではいまや試用期間を設けて、それ以上使うためには送金して送られてくるパスワードやシリアルナンバーなど(以下、これらを総称してライセンスキーと書きます)を入力する必要のあるものが大半です。確かに制限でも設けなければ登録してくれる人が極端に少なくなってしまうので、ソフトの作者側としては登録を義務付ける意味では必要なのかもしれません。
しかし、そうすると今度はライセンスキーを集めて公開する人の出現という事態が発生しました。ちょっと堅い話になりますが、これは、著作権法などにかかるものではありません。(創作的な文章などがライセンスキーになっている場合は別ですが(^^;)しかし、少なくともライセンスキーの公開を明示的に禁止しているソフトの使用権に違反しています。が、そんなことは個人ユーザは分かっていてもついつい誘惑に駆られ使ってしまうこともあるでしょう。(以下、これらの不正手段によって入手したライセンスキーを利用してソフトを使うことを不正利用と書きます。)
そうなってくると、作者側には登録者の減少という被害が生じます。すると、作者は本来ならソフトの開発に注ぐべき労力を不正利用の防止に対抗するために使うことになります。結果として、ソフトの発展を妨げてしまうことになります。ここでは、効率的にそれを防ぐために不正利用に対する対策を考えていきます。(文章のつながりが強引な気もしますが、それは考えないことにしましょう(^^;)この記事では「主流」などといった言葉が時々出てきますが、あくまでも私の主観によるものであり、違っていることもあるかもしれませんがそこのところは見逃してください。
まず1回目の今回は、シェアウェアの登録方法やライセンスキーの伝達方法についてみていきます。
最初に、登録方法についてみてみましょう。ライセンスキーの伝達方法は、登録のための送金の方法とも密接に関わりがあります。ネット上のカード決済をしておいてメールアドレスが無いなどということは普通は無いですし、わざわざはがきで銀行への振込みが終わったことを通知してきた登録ユーザにEメール(以下、単にメールと書きます)で通知するのは無理な話です。ということで、結局登録方法までさかのぼってみることにします。
主な登録方法
- 商用パソコン通信の振込サービス
具体的にはNiftyなどの振込サービスです。これは昔、インターネットが普及する前の主流だった方法で、当時はパソコン通信上でのソフト配布がかなりの部分を占めていました。それで、必然的にその配布場所であるネットワークを利用した振込みサービスというものがありました。これなら身元確認も(その会社側からは)行っているということになります。もちろん現在でも使われていますが、割合的には当時ほどではないでしょう。
- 振込+はがきで通知
しかし、その手のネットワークはネットワークの利用自体が有料だったので、個人ボランティアが運用するいわゆる草の根ネットでしか使わない人や(私もその一人でした)、それ以前に一切ネットワークに接続せず、オンラインソフトの入手は雑誌からのみという人も結構いたので、そういう人はこの方法で必然的に登録することになっていました。まぁ、現在においてもそういう環境の人はいるでしょうけど。現在では他の手段だけでも登録してもらえるようになったので、作者が自分の住所などを知られないようにするためにこの方法を使わないこともあります。
- 振込+振込完了通知メール
現在ではこれが多いと思います。しかし、登録者の正確な名前や住所などを知ることができるとは限りません。
- インターネット上の決済システム
Vectorのプロレジ/シェアレジ(以下、単にシェアレジ)などがこれにあたります。この方法ならある程度確実なユーザ情報が得られることと、利用するシステムによっては海外からの登録もある程度簡単に受けることができるのが特徴です。しかし、登録するにはクレジットカードが必要になるのでそれが制限になります。
- 直接送る
ユーザ登録に必要なものが金銭以外の場合は確実にこの方法です。物としては、酒とか図書券とか切手とかそういったものが多いと思います。また、現金書留で直接現金を送ることもあります。(税金徴収から逃れるためにこの方法をとっている人もいるかも(^^;;※1)この方法なら誰でも登録できるのが利点ですが、もしかしたら爆発物とかが送られてくるかもしれません。(もちろん普通はそんなことはありませんが、ちょっとした嫌がらせ程度ならありえます)
大体こんなところが主な方法ですが、今回の話題に絡んでくるのは、まずは登録者を特定できるかということが最大のポイントです。商用ネットやインターネット上の決済システムの場合は、一般的には利用時に誰から送金されたかは確実に特定できるので、これらの方法のみを取れば登録ユーザが故意にキーを流出させる可能性は減ります。また、登録方法からキーの伝達方法もほぼ決まってきます。それから今回の話題には直接関係ありませんが、方法によって作者側やユーザ側に手数料が必要なものもあるので、そのあたりは各自確認しておきましょう。(※2)
ライセンスキーの主な伝達方法
送り方によってもキーの種類が制限されうるので、これについても見ていきましょう。
- はがき(封書)で送る
今ではそんなに必要は無いですが、一昔前はこれが主流でした。この場合はもちろん短いキーしか送れません。当然バイナリタイプのキーを送ることは不可能です。
- フロッピーで送る
時々見かけた方式ですが、はがきの場合よりも費用がかかるのが問題です。しかし、これなら大きなライセンスキーでも送ることが可能で、私が見たことのあるのは大きめのバイナリタイプのライセンスキーのものです。ただし、Windowsなどでは、昔のPC-98では1.2Mフォーマットしか読めなかったりするので、作者側が1.2M/1.44M両方に対応できなければいけません。これも今ではほとんど見かけません。
- メールで送る
今は圧倒的に主流です。手軽で費用もほとんどかからないのが利点です。しかし、ライセンスキーがバイナリの場合は注意が必要です。(詳しくは第2回目の記事を参照してください。)私は見たことはありませんが、HTTPやFTPのためのアドレスだけメールで送って、ライセンスキーをバイナリでダウンロードするという形をとっているものもあるかもしれません。また、これも見たことはありませんが、普通にメールで送るとネット上に自分のソフトのパスワードを通過させることになってしまうので、PGPなどの公開鍵方式を使ったものもあるかもしれませんが、現在のところそんなに普及しているものではないので非現実的です。(しかし、公開鍵方式による暗号化ツールが一般化すれば、これを利用するようになる可能性はきわめて高いです。)
これもそんなに種類があるわけではないので、こんなところでしょうか。
今回はここまでです。第2回目はライセンスキーの種類について見ていく予定です。
脚注
※1
たいていの作者は開発のために買った物(開発ソフト・周辺機器・書籍・電気代などで開発のために買ったことが明らかなもの)の領収書を取っておけばほとんど税金はかからないと思います。ちなみに、これを考慮した結果がマイナスになろうとも収入がある限りは確定申告は必要です。なお、現金書留であろうが収入であることにかわりは無いので当然申告の義務が生じます。詳しくは本などで調べるか税務署に行って聞いてみてください。
※2
ユーザ側にただでさえ手数料がかかるのに、作者側にも手数料がかかるからという理由で他の登録方法よりも高めの登録料金にしている作者がいますが、はっきり言ってユーザの反感を買うだけです。(作者によっては「手数料分を考慮して」としか書いてないので、ユーザにとってはなんで他の方法より高い登録料金なのか分からないこともあります。)料金を変えるならむしろユーザ側の負担を考えて安くするべきですが、やはり送金手段によらず登録料金は一律にするのが好ましいでしょう。
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